第27回 水素エネルギー研究会
(月刊『コロンブス』2026年1月号掲載)
水素で世界をリードする
「TOKYO H2」プロジェクトが始動!!
グリーン水素の本格活用のための基盤づくりや水素需要の拡大、社会実装の加速に向けて独自の水素戦略に取り組んでいる東京都。商用車を中心とした水素モビリティの普及にも力を入れており、官民連携による「TOKYO H2」プロジェクトが本格スタート!!
商用FCVの普及に向けた補助策を拡充する東京都
東京都における燃料電池自動車(FCV)の登録台数は1424台(2024年3月末時点/(一財)自動車検査登録情報協会統計資料)。この数字を「2035年度までに商用FCVの導入台数を約1万台、商用車対応の水素ステーションを約1000基の大台に乗せる目標を掲げている」(図1)と東京都産業労働局産業・エネルギー政策部新エネルギー推進課長の池田千賀子氏。目標達成に向けて、都ではFCVの導入に1台につき最大225万円の補助を行っているほか、バスやタクシー、トラックなどの商用車についてはさらに手厚い補助事業を実施している(図2)。いずれも従来車両と同額で導入できるよう支援する「基本補助」があり、それぞれ1台につきバスは上限5000万円、タクシーは上限370万円、小型トラックは上限1300万円、大型トラックは上限5600万円となっている。さらに5年で一定台数以上を導入する計画書を提出したり、営業所に水素ステーションを整備したりすると、それぞれ1台につきバスは上限2000万円、タクシーは上限240万円、小型トラックは上限3400万円、大型トラックは上限1億1500万円の上乗せがある。そして燃料費支援の補助も。
また、FCごみ収集車の普及にも力を入れている。「本事業に参加表明をした千代田区、台東区、葛飾区、練馬区、町田市、多摩市、東久留米市、清瀬市、八王子市、東村山市で2023年度から2027年度の間、各区市で1台ずつ1年半交代で試験利用(無償貸与)を実施している」と池田氏。さらに「FCごみ収集車の本格的な導入(集中導入)を計画する区市町村に対しては、都が車両導入費用を負担する」としており、現在のところ江東区、東久留米市、清瀬市、西東京市が名乗りをあげているという。
当然のことながら、こうしたさまざまな商用FCVを普及させるためには、車両導入に向けた支援策だけでなく、そのインフラである水素ステーションを増やしていかねばならない。そこで東京都では、国の補助(※)に加えて独自に水素ステーションの整備や運営に関するさまざまな支援策を展開、拡充している。10年前は都内に4基だった水素ステーションがいまや30基(2025年9月時点)となり、水素供給量も4㌧から約460㌧と100倍以上になるなど、着実に成果を上げている。また現在、江東区や新宿区などの都有地であらたな水素ステーションの整備をすすめているところだそうだ。
※経済産業省が2025年5月に「燃料電池商用車の導入促進に関する重点地域」(東北/福島県、関東/東京都・神奈川県、中部/愛知県、近畿/兵庫県、九州/福岡県)を選定。今後、これらの地方公共団体内の水素ステーションでは国がディーゼルと水素の燃料費の差額に対して約700円/㌔㌘(差額の4分の3程度に相当)を追加補填するなど支援を拡充していくという。
官民連携で水素導入を加速させる‼
東京都はさらに2025年9月、「水素で世界をリードする」を掲げ「TOKYO H2」プロジェクトをスタートさせた。これは官民連携によって水素の社会実装を加速させるプロジェクトで、まずは全国初のFCタクシーの大量導入をはかることに。「トヨタのクラウンセダンのFCVモデルがタクシーとして都内に導入されている。都としては2030年までに600台の導入を目指している」と池田氏は説明する。
このFCタクシー、1回あたりの水素充填による走行距離は約820㌔㍍で充填時間はわずか約3分。現時点ではまだ走行台数は少ないが、タクシーアプリ『S.RIDE(エスライド)』での配車もはじまっており、都民からの注目も徐々に集まっている。「水素の社会実装を加速させるには、現時点での水素エネルギーの普及や今後の展望を見える化し、社会全体の関心を高める必要がある。エコで走行音が静か、乗り心地も良いFCタクシーの導入はまさにそのための活動」と池田氏。「多くの人に利用してもらい、都としてもプロジェクトを盛り上げ、水素エネルギーの普及拡大につなげていきたい」と話している。
トヨタの「TOYOTAMIRAI ショールーム」をリニューアルした「TOKYO H2 HUB」(東京都港区)などにプロジェクトロゴを掲出したり、ジャパンモビリティーショーで都主催のトークショー「TOKYOH2プロジェクト〜東京は、水素でおもしろくなる。〜」を開催したりと、官民連携で「水素で世界をリードする東京」を広くアピールする戦略が本格化している。