カーボンニュートラルニュース vol.23

(2025.05.15)


山梨大学が国の大学強化事業で
「クリーンエネルギー研究拠点」として採択
次世代の水素製造法の研究を進めるほか、
海外大学との連携も強化

コロンブス2505
ゼロエミッションみらいラボの外観(山梨大学提供)。グリーン水素研究を核としたクリーンエネルギー研究をすすめる同大学『グローバルニュートラルエネルギー研究機構(GRIEEN)』の中心施設

 国立大学法人山梨大学は、文部科学省の2024年度「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」に「クリーンエネルギー研究拠点」として採択された。25年4月から30年3月まで、グリーン水素研究で約50億円の支援を受けることになった。
 研究は水素製造、燃料電池開発、合成燃料製造の3本柱ですすめる。水素製造のための水電解技術には、従来のアルカリ水型や酸性のPEM(固体高分子)型などがあるが、前者のアルカリ水型では電解液に強アルカリ液を使用することから安全性に課題があるほか、気象条件などによる変動が大きい再生可能エネルギー発電に対応するのが難しいという点も指摘されていた。また、PEM型は希少金属イリジウムが必須で、将来の本格普及には向いていない。そこで低コストなアルカリ型で、かつ安全性の高いあらたなアニオン膜型水電解の製造法の確立に向けて触媒、電解質膜の研究を行っていくという。
 燃料電池の分野では、バス・トラックなど大型FCV向けを開発をする。重量負荷と長距離走行を前提に、触媒の土台として従来のカーボンの代わりにセラミックスを用い耐久性を確保するという。
 SAF(Sustainable Aviation Fuel/持続可能な航空燃料)などに使用する合成燃料の製造では、高額なコスト(現在、700円/㍑)の低減をはかる。
 山梨大学はこれらの研究に自動車メーカーのほか、㈱メイコーや日邦プレシジョン㈱などの中小企業とも連携して取り組んでおり、今後、連携先をさらに広げるとのこと。さらに国際連携にも力を入れていく予定で「すでにドイツのハンブルク大学、米国のカリフォルニア大学マーセド校、マレーシア国民大学とは燃料電池の共同研究をすすめるとともに、学生が両大学の学位を同時に取れるデュアルデグリー(DD)制度もはじめる。マレーシアでは、パーム油を用いた合成燃料の研究などで連携する」(宮尾敏広・山梨大学クリーンエネルギー研究センター教授)そうだ。
 こうした研究開発をすすめるにあたって、甲府キャンパス内に拠点施設「ゼロエミッションみらいラボ」を今年6月にオープンする。実験室を備え、国際的なトップ研究者や留学生などを招くほか、学生の教育拠点としても活用する予定。