カーボンニュートラルニュース vol.33

(2025.06.23)


高温水素環境下での
金属素材を評価する試験機を
九州工大とリックス㈱が共同開発
製作コストを抑えた試験機を複数台用意し、
リードタイムを短縮

コロンブス2506
クリープ試験機を前にした薦田亮介・九州工業大学大学院准教授(右端)
 国立大学法人九州工業大学とリックス㈱はこのほど、高温の水素環境下で荷重を加えられた金属素材がどのような影響を受けるかを評価するクリープ試験機を共同開発した。800℃という高温での評価が安全かつ安価にできることが最大の特徴。「水素が洩れないように隙間を密封するシールに関する設計や熱が伝わりにくい機器の形状など、いくつもの工夫を凝らすことで可能になった。また、試験片を一定の形状のものに絞ったことで、容器やヒーター、機器そのものを小型化でき、コスト削減にもなった」(薦田亮介・九州工業大学大学院工学研究院准教授)という。さらに将来的には試験機を複数台用意し、温度や荷重、水素ガス圧力など異なる条件下での評価を同時並行して行い、リードタイムの短縮をはかるという。クリープ試験には数百から数千時間、場合によっては年単位という長時間が必要で、試験機が1台しかないとさらに時間を要することになる。これまで水素環境下でのクリープ試験というと、試験機関が限られており、しかも機器の台数が少なく、容易ではなかった。
 将来的に、水素はタービンや高炉など高温環境で活用される機会が増えていくことが予想されるが、「そうした高温水素環境下での金属材料特性のデータはまだ十分に集まっていないのが現状。水素対応装置の安全性を確保するために、この試験の重要性はますます高まってくる」(薦田准教授)とのこと。
 試験は福岡県内にあるリックス協創センターで行われることになっており、今年度中には試験に必要な水素供給システムなどの体制を整えて、来年度からクリープ試験の受託開始予定としている。試験結果に基づいたフィードバックも行われる。鉄鋼や自動車をはじめ、多くの業界の研究機関の利用が見込まれている。