カーボンニュートラルニュース vol.39

(2025.07.17)


中国が日本を抜き水素関連の特許競争力で首位に
地方特区が競争力をけん引
米国で水素エネルギーの開発、発見相次ぐ
韓国は世界サミットで水素の技術力アピール

コロンブス2507
躍進する中国の水素エネルギー車。水素回廊と呼ばれる重慶-貴州-広西を走る大型トラック
写真:中国通信社

 水を電気で分解して水素を取り出す電解槽など主に製造分野で技術力を高める中国が、水素関連の特許競争力で日本を上回り、初めて首位に立った。中国は太陽光や洋上風力発電でも高い競争力があり、脱炭素エネルギー分野での存在感が高まっている。こうしたなか、湖北省武漢市は4月に水素エネルギー産業連盟の設立と、武漢市水素エネルギー産業発展3年行動プランを発表した。同市には武漢経済開発区を中心に70余りの水素エネルギー重点企業や研究所が集積しており、今後は水素エネルギーの製造や貯蔵、運搬、充填、利用などの全産業サプライチェーンのシステムを構築し、水素産業エネルギー全体の競争力を高めるとしている。中国全体でみると、水素燃料電池車(FCV)の生産台数は伸び悩んでいるが、地方レベルではあらたな動きも出ている。吉林省長春市では、中車長春軌道客車が開発した新エネルギー低輸送量鉄道交通車両が登場した。水素エネルギーをメイン動力とすることで外部電源への依存から完全に脱却、運行全体の二酸化炭素排出ゼロを実現した。列車は1回の水素充填で320㌔㍍以上の航続距離を達成、1㌔㍍当たりのエネルギー消費量はわずか1.5㌔㍗時(kWh)という。一方、重慶無水港では4月、水素エネルギーで走る大型トラック10台が運行を開始した。重慶と広西チワン族自治区欽州港を結ぶ西部陸海の「水素回廊」(全長約1150㌔㍍)には途中4カ所の水素ステーションがある。水素トラックは重慶、貴州、広西周辺の物流をけん引することになる。
 トランプ政権の発足で再生可能エネルギーに逆風が吹いている米国も、水素エネルギーにつながる開発や発見が相次いでいる。ローレンス・バークレー国立研究所は二酸化炭素から炭化水素をつくり出すパネルを開発。植物由来の素材ではないパネルを使って光合成を模した現象をつくり出すことに成功した。パネルを光に照らすと、空気中の二酸化炭素から炭化水素をとり出せるという。今後は、プラスチックや燃料の生産に役立つことが期待される。また、3月17日付の科学雑誌「ジャーナル・オブ・ジオフィジカル・リサーチ」は、NASAゴダード宇宙飛行センターの研究チームによる実験で、太陽の荷電粒子(太陽風)が月面で水を生成している可能性が証明された、と報じた。実験は1972年にアポロ17号によって採取された月の土壌サンプルに小型粒子加速器で模擬太陽風を照射して行われた。この実験で、太陽風から放出される高エネルギーの陽子が月などの天体の表面にある鉱物に含まれる酸素と結合することで水分子が生まれるという水生成理論が裏付けられたことになる。5月にはオランダのロッテンダムで「世界水素サミット2025」が開かれた。韓国のフョンデグループは国内の水素エネルギー産業を支援する組織「H2KOREA」と共同で、水素発電機と路面電車をセットにした水素社会のジオラマを公開。トラックやバス、フォークリフト、路面電車に使用される最新の燃料電池なども展示した。円卓会議では、ロッテンダム港の持続可能性目標を踏まえ、水素の製造から輸送、貯蔵、利用までの全工程を一体的にとらえ、効率的な水素社会の実現を目指すビジネスモデルを発表した。