カーボンニュートラルニュース vol.91

(2026.07.30)


水に浮かべるだけで水素生成と
発電を行うデバイスの開発を深耕
CNTと窒化炭素の複合素材


 東海大学は、同大学工学部応用化学科の高尻雅之教授と源馬龍太准教授のグループが水に浮かべることで発電と水素を同時に製造できるデバイス(装置、機械など)を開発。

コロンブス2607

 デバイスは単層カーボンナノチューブ(CNT)とグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)で構成されている。研究グループはこれまで、CNT膜単体を水に浮かべると水と接した膜の部分が蒸発によって蒸発冷却が生じデバイス内で自動的に温度差が生じることを発見している。この温度差により電位差(起電力)が生じるゼーベック効果を利用し、熱を電気に直接変換する熱電発電ができるというのだ。今般はCNTに、光エネルギーを吸収して水素を生み出す光触媒であるグラファイト状窒化炭素を組み合わせ、直径約80㍉㍍の複合膜を作製。この複合膜4枚をポリイミド基板に貼り付けて銀ペーストと銅線で直列につなぎ、水面浮遊型デバイスとした。

 複合膜のアイディアは、安価で化学的に安定な光触媒であるグラファイト状窒化炭素にCNTを組み合わせると、光エネルギーにより生じた電子がCNTの網目により素早く運び出され、電子と正孔(プラスの電荷)の再結合を抑制することで、光触媒としての性能が高まる特性から着想したという。デバイスの発電の研究(紫外線照射)では、グラファイト状窒化炭素の割合が高いほど電圧は大きくなり、窒化炭素100㌫のデバイスでは5.1 ㍉㌾(CNT単体比で38㌫向上)に達した。水素生成の研究では、研究の初期に純水だと水素生成の反応が得られなかったが、犠牲剤(電子供与剤として反応を進める補助試薬)として水にトリエタノールアミン(TEOA)を添加すると、紫外光(波長365 nm・1平方㍍あたり約1㌗)を5時間照射した際に最大で水素0.57㍃molと、メタン1.12 ㍃molが得られた。水素に加えてメタンが生成するメカニズムとしては、まずデバイスに紫外光が当たるとグラファイト状窒化炭素の中で電子と正孔の対が生じる。生じた電子がCNTへ移動して、再結合を抑えながら水素イオンを還元し、水素を生成する。また、犠牲剤のトリエタノールアミンはこの正孔を消費する過程で分解し、その分解生成物の一部としてメタンが生じた、とのプロセスが考えられると、研究チームは指摘している。

 デバイスは柔軟で軽量な本体を持ち、重金属を用いていない。研究チームはデバイスの将来像として、河川・貯水池・海面など多様な水環境において、その場で電力と水素を生み出す「分散型・環境調和型」のエネルギーハーベスティングの基盤になることを念頭に置いている。実用化に向けて今後、紫外線以外の波長域、とくに可視光での反応性を高める開発を行い、自然太陽光下での性能評価、長期間にわたる繰り返し動作の安定性評価などを実施していく予定だ。

コロンブス2607